以前ドキュメンタリー番組で、自立を支援する業者に、母親が相談した時の模様が放送されていました。
長年引きこもりの息子にほとほと困り果て、自力での解決は不可能だと思った母親は、業者に相談することにしたのです。
引きこもりの人を引きこもりから引き出すということから、このような業者は『引き出し業者』と呼ばれています。
テレビで見た引き出し業者は多少強引なところはあったものの、わりと良心的な印象でしたが、悪質な業者も増えているそうです。
悪質な業者に頼んでしまった場合、3ヶ月で500万円・半年で700万円などのように、高額な金銭を要求されることがあります。
しかも支援とは名ばかりで、無理やり家から連れ出され、まともな自立支援プログラムやケアがなされることはなく、単に監禁状態にされているだけのケースもあるそうです。
ひどいケースになると、引き出し業者を相手に訴訟を起こした人もいます。
私も筋金入りの引きこもりなので、こういったニュースを目にするたびに、心臓をわしづかみにされたかのような痛みを感じます。
今回はこういった悪質な『引き出し業者』についてや、引きこもりについて思うことなどを、書いていきたいと思います。
引きこもりが起こした痛ましい事件
2019年5月28日。神奈川県川崎市の登戸駅近くの路上で、痛ましい事件が起きました。
市立カリタス小学校の児童たちがスクールバスを待っていたところに、包丁を持った男が突然襲いかかったのです。
この事件により、保護者の男性と女子児童の2人が死亡、18人が負傷しました。
事件を起した男(当時51歳)は、その場で自ら首を刺して命を絶ちました。のちにこの男が、長年の引きこもり状態だったことが明らかとなっています。
そしてこの事件は、その後に起きたもう一つの事件の引き金となってしまうのです。
さらに痛ましい事件が続く
神奈川県川崎市の事件から4日後の6月1日。
元農林水産省事務次官の熊沢英昭(当時77歳)が、練馬区の自宅で自分の息子(当時44歳)を殺害しました。
殺害された息子は引きこもり生活が長く、家庭内で暴力をふるっていたそうです。
事件が起きる数時間前には、自宅に隣接する小学校で運動会があり、その声をやかましく感じた息子は「うるさい、ぶっ殺すぞ」と叫んでいたそうです。
それを聞いた元農林水産省事務次官である父親は、川崎市の事件が脳裏をよぎり、小学校の子供たちに危害を加えるかもしれないと思ったため、息子の殺害を決意したと、取り調べで供述しています。
この川崎市と練馬区で起きた事件には、どちらも引きこもりが関係しているのです。
役所があてにならない
このような事件を受けて引きこもりの子供を持つ親たちは「うちの子も事件を起してしまうのでは?!」「そうなる前に手を打たなければ!」と、焦りの気持ちを募らせます。
けれど公的な相談機関があてにならず、藁にもすがる思いで、引き出し業者に頼ってしまうのではないでしょうか。
実際に私の母親も、1度役所の福祉課へ、私のことを相談しに行ったことがあります。
けれどあまり熱心に話を聞いてもらえなかったと言っていました。
少し話を聞いただけでこれといったアドバイスをしてくれることはなく「今度娘さんと一緒に来て下さい」と言われただけでした。
当時の私は今よりもさらに対人恐怖症がひどくて、役所の人と話せる状態ではなかったので、見かねた母親が1人で相談に行ったのです。
母親は決して頭のいい人間ではありません。ちょっとした問い合わせの電話をかけるだけでもどう言ったら良いのかわからずに、躊躇してしまうような性格です。
車を買う時や医療保険の説明を受けたりなど、少し込み入った内容の話になると、上手く理解できずに戸惑ってしまうような人です。
そんな性格の母親が、意を決して1人で役所の窓口に相談に行ったのです。
私の父親は、子供のことを心配するような性格ではないですから。
母はきっとものすごく緊張したと思います。緊張しながらやっとの思いで役所に行き、少しでも役に立つ情報が欲しいと、私のために相談に行ってくれたのです。
けれど役所で冷たい対応をされ、こといった情報を貰えることはなく、後味の悪い気持ちだけが残ってしまいました。
誰も助けてなんてくれない
1度このような目に遭ってしまうと、また同じような事になって嫌な思いをするのではないかという、恐怖心が芽生えてしまいます。
引きこもり当事者だけでなく、その親たちも世間に対して引け目を感じたり、子供の将来を心配したりして、心が弱っているのです。
意を決して相談に行った役所で冷たい対応をされてしまうと、ただでさえ弱っていた心が、さらに弱ってしまいます。
私が通っている精神科の待合室には、引きこもりの人の相談会のような催し物の張り紙がされています。最近ではテレビのCMでも「1人で悩まずにご相談ください」というものが流れていたりします。
ああいった場所に出向き相談すれば、何かしらの道しるべを示してくれるのでしょうか・・・。それともまた、冷たい対応をされるだけなのかな・・・。
母親も決して体調が良いとは言えず、自分も病院へ通いながら、私のために少しでもお金を残そうと、懸命に節約に励んでいます。
定年退職してせっかく時間が出来たのに、これと言って趣味を楽しむわけでもなく、35度を超える猛暑の中でも、勿体ないからとエアコンを入れようとしません。
そんな母の姿を見ていると、辛くて毎日のように泣いてしまいます。
障害者手帳の取得を考える
障害者手帳や療育手帳を持っている人なら、役所の人ももう少しちゃんと相談にのってくれそうな気がするので、最近は手帳の取得を考えたりもします。
けれど手帳の取得が目当てで病院に通っていると思われるのが嫌で、なかなか言い出せません。
それに手帳を取得して障害者雇用の枠で仕事を探したとしても、家は本当に田舎なので、良い仕事が見つかるとは思えないのですよね。そもそも私の住む地域には、これといった会社がありませんから。
中には安く雇った障害者雇用の人材に、普通に仕事をさせるような会社もあるようなので、そのへんの事も心配です。賃金が安いのに普通の人と同じように仕事をさせられるような状況は避けたいところです。
善人ぶった悪人が怖い
インターネットで『引きこもり 相談』などのワードを入れて検索すると、様々な業者が出てきます。
親身になって相談にのります!!
ここから何人もの人が立ち直っています!!
などの感じの良い言葉が並んでいますが、実際のところはどうなんでしょう??
引き出し業者の被害に遭ってしまった人達も、きっとこのような感じの良い謳い文句に惹かれて相談へ行ったんだろうなと思うと、どこの業者も悪者に見えてしまいます。
「困っている人の力になりたい! 一緒に頑張りましょう!」などと上っ面だけの優しい言葉を並べて、実はお金を搾り取ることしか考えていない。どいつもこいつも要するに金儲けがしたいだけの、金の亡者に見えてしまいます。
実際問題、本当に引きこもりのことを心から心配して支援活動をしている人って、いるのでしょうか??
取材をして記事にするとお金になるからとか、番組で取り上げるとそこそこ数字が取れるからとか、引きこもりの人をビジネスに利用したいだけのように思えてならないのです。
その最たるものが、引き出し業者なのだろうなと。
弱った心や追い詰められた状況に付け込んで金をむしり取るなんて、本当に許せません。
もちろん仕事をした対価としてお金が欲しいと思うことは、悪い事ではありませんよ。
お金を稼がなければ生活できませんから、公的機関でもない限りは、有料になるのは仕方のないことです。
けれど支援する知識や気持ちもないくせに、嘘八百を並べて高額な金銭を要求するのは悪質です。
引きこもりの支援を謳う業者についての記事を幾つか読みましたが、メディアで取り上げられている業者でも、必ずしも良い業者とは限らないようです。
どの支援者と繋がるかの見る目を持たないと、かえって辛い状況になってしまう可能性があります。
ネット上に溢れる様々な情報を目にするたびに「善人面した悪人を見分けられなかったら怖いから・・・」と、ますます自分の殻に閉じこもってしまいます。
居場所よりも仕事を提供してほしい
近ごろでは、引きこもりの人の居場所を提供する団体が増えています。
当事者同士が集まって、一緒にお茶したり遊んだりして交流を深める場のようです。
引きこもりの人が孤立しないためにこのような場所は必要だと思うのですが、居場所を提供するだけでは、根本的な解決にはならないと思うのですよね。
結局のところ、お金を稼がないと生きてはいけませんから。
若い引きこもりの人なら、そういった場所に出向いて人と接することに慣れていき、仕事の面接に行けるようになって、自立することができるようになる確率も高いと思います。
けれど『8050問題』になるような中高年の引きこもりの人だと、なかなかそうはいかないと思うのです。
引きこもっていた期間が長いだけに履歴書スカスカなので、普通に面接に行ってもまともな会社にはまず落とされます。中高年の引きこもりだと体力の低下もそれなりにあると思うので、ハードな仕事だとついていけない確率も高いです。
まともに人が集まらないようなブラック企業になら雇ってもらるかもしれませんが、ブラック企業で働くくらいなら、引きこもっていた方がいいと思ってしまいます。
ブラック企業で働いたところで、恐らくひと月ともたないでしょうから。しかもブラック企業はなかなか辞めさせてくれないらしいので、気を付けないとホント怖いです。
辛い事があっても逃げずに会社勤めを続けている人は、世の中にはたくさんいます。
故に引きこもりになったのは私が弱いからなわけで、こうなったのは自己責任なわけで、誰かに支援を求めるのはあつかましいことなのかもしれません。
なのでもう、今のままいけるところまでひっそりと生きて、お金が尽きたらひっそりと消えていくのが望ましいのかもしれません。
けれどもう1度普通の人の輪の中に入って普通に働いて、母親を安心させたいなという気持ちがないわけではなくて・・・。
在宅ワークでやっていくんだ! と腹をくくるのもひとつの方法ではありますが、フリーでWebライターやチャットレディなどをやるよりも、社保に入れて有給もあるような所で定年まで働けたらいいなと思う気持ちもあったりで、考えがまとまりません。
こんな中途半端な状態はよくないと思いつつも、何をどうしたらよいのかわからず、宙ぶらりんな状態です。
同年代の引きこもりの人はこの先のことをどう考えているのかと、似たような境遇の人のブログやツイッターを探してみるのですが、出てくるのは若い人のアカウントばかりです。
中高年の引きこもりの人は、今なにを想い、将来をどう考えて生きているのでしょうか・・・・・。
なにはともあれ、ヤケクソな気持ちにだけはならないようにしたいです!!
泥臭くコツコツ努力して、少しでも生活費の足しになるよう、今は在宅ワークに励もうと思います!!
それでは今日はこのへんで。コノハでした。